「苦渋の判断…」家族会の新たな方針
「苦しいギリギリの判断の中で今回の運動方針をつくった」
2月25日に都内で開かれた家族会と救う会の合同幹事会でこう語った家族会の代表で横田めぐみさんの弟・横田拓也さん。
新たに盛り込まれた運動方針は「親世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、日本が北朝鮮にかけている独自制裁を解除することに反対しない」というものだった。
日本が北朝鮮に対し、独自に行っている経済制裁には、かつて新潟港と北朝鮮を結んでいた万景峰号の入港禁止が含まれている。
横田めぐみさんの父・滋さんや母・早紀江さんなど親世代が先頭に立ち、働きかけてきた北朝鮮への経済制裁。
「その解除に反対しない」という方針を盛り込んだ思いについて、拓也さんは怒りを交えて語った。
「この主権国家の領土を踏みにじって無実の13歳の少女を拉致したあげく、50年近く帰さない相手に平静心を保って対話をしましょうなんてことは、本当は苦しい。それでも、私はめぐみに会いたいし、母・早紀江にめぐみと再会してもらいたいし、日本のこの地で抱き合ってもらいたいし、そういった気持ちはどの家族も一緒。苦渋の判断です」
“親子の再会”迫るタイムリミット…
その中で強調するのは、親子の再会というタイムリミットだ。
「万が一、親世代が亡くなった後に拉致被害者を帰国させたとしても、解決とは見なさず、北朝鮮に対して制御の効かない怒りに舵を切ることを正しく伝えてください」
2024年に入り、北朝鮮は金正恩総書記が能登半島地震に際し、見舞いの電報を出すなど日本への発信が続いていて、家族会はこれを「重要局面」と捉えている。
有本恵子さんの父・明弘さんは95歳。そして、めぐみさんの母・早紀江さんは88歳に。
下された苦渋の判断は残された時間の短さを表している。