立って入る130cm深湯が話題 100年の歴史刻む国の文化財で極上の温泉体験

雪が舞い散る新潟県三条市の山間に、ひときわ趣のある温泉旅館が佇んでいます。約100年の歴史を誇る嵐渓荘は、国の登録有形文化財に指定された建物と、立ったまま肩まで温泉に浸かれる「深湯」がある温泉宿です。

かつて海底だった地層から湧き出る源泉は、塩分濃度が濃く、その成分は美容効果も期待できると言われています。冬の訪問時、雪景色と温泉の湯気が織りなす幻想的な風景に、思わず足を止めてしまいました。

驚きの130cm!立ったまま肩まで沈む「深湯」体験

「これが本当に温泉?」――4段の階段を目の前にして、思わずそんな声が漏れます。一般的な湯舟の深さは50〜60cm程度。しかし、嵐渓荘の「深湯」は、その2倍以上の130cmという深さを誇ります。

130㎝を誇る深湯

階段を一段ずつ下りていくと、徐々に温かな湯が体を包み込んでいきます。最後の一段を下りきると、大人が立ったまま肩まで温泉に浸かる状態に。この独特な深さにより、全身で温泉成分を存分に味わえるだけでなく、温泉の中で歩くことさえ可能です。

「まるで温泉の中を散歩しているような感覚です」と、温泉ソムリエの大塚七海さんは語ります。「体重が軽くなった状態で温泉に浸かれるので、通常の入浴とは全く異なるリラックス効果が得られます」

海底が育んだ源泉の神秘

嵐渓荘の温泉の特徴は、その深さだけではありません。

無色透明でありながら、どこかとろみを感じる湯質。ナトリウムと塩化物を含む泉質は、肌を優しく包み込むように保湿してくれる効果があります。「湯冷めしにくい」という特徴も、この成分によるものだと言われています。

館内のラウンジでは、その源泉を使用した「温泉ほうじ茶」のサービスを提供しています。一口飲むと、まろやかな塩味が広がり、その後に優しい旨味が続きます。「温泉の成分をお茶で体験できる」という、ユニークなおもてなしの一つです。

100年の歴史が紡ぐ温泉文化の継承

昭和2年の創業以来、約100年にわたって温泉文化を守り続けてきた嵐渓荘。国の登録有形文化財に指定された本館は、昭和8年頃に別の場所に建てられ、その後、昭和30年頃に現在の場所に移築された歴史ある建造物です。

館内に一歩足を踏み入れると、年月を重ねた木材と温泉の香りが織りなす独特の雰囲気に包まれます。廊下には当時の面影を残す調度品が置かれ、まるでタイムスリップしたかのような感覚を覚えます。

冬季には、温泉に浸かりながら降り積もる雪を眺める雪見風呂も楽しめます。湯気の向こうに舞い散る雪片は、まるで水墨画のような風情を醸し出します。

「建物の歴史と温泉の特徴、そして四季折々の自然が織りなす体験は、現代では希少な価値となっています」と語るのは、嵐渓荘の大竹さん。100年の時を経て、なお色褪せることのない日本の温泉文化を、この地で体験することができます。

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