「生まれ変わる」東電幹部の言葉とは裏腹に…柏崎刈羽原発の追加検査“継続”「自主的に対応できているか疑問残る」

テロ対策の不備が相次いだ東京電力・柏崎刈羽原発の改善措置などを確認する追加検査について、原子力規制委員会は継続することを決めた。
これにより、事実上の運転禁止命令も継続される。追加検査終了時期について、山中委員長は「東電の取り組み次第」と指摘した。

不備相次ぎ…事実上の運転禁止命令

原子力規制委員会 山中伸介 委員長:
私自身は、現状も厳しい状況であると認識している

原子力規制委員会 山中伸介 委員長

原子力規制委員会の山中伸介委員長がこう話すのは、2021年、テロ対策の不備が相次いで発覚した東京電力の柏崎刈羽原発。

2021年4月には、事態を重く見た原子力規制委員会が東京電力に対し、事実上の運転禁止命令を出す事態に。

柏崎刈羽原発

東京電力 小早川智明 社長(2021年9月)
本気で生まれ変わらなければ

東京電力新潟本社 橘田昌哉 代表(2021年9月):
柏崎刈羽原発を生まれ変わらせるために

柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長(2021年9月):
生まれ変わった姿を行動と実績で示す

東京電力 小早川智明 社長(2021年9月)

その後、東京電力が改善計画をまとめた報告書を提出。

原子力規制庁 熊谷直樹 追加検査チーム員(2021年10月):
追加検査フェーズ2の初回の現地検査を実施する

これを受け、原子力規制委員会は、委員全員が現地入りするなど異例の体制で追加検査を進め、実際に改善が図られているのかを確認してきた。

原子力規制委員会の追加検査

「疑問残る」追加検査継続へ

そして2023年5月17日、ようやく取りまとめられた追加検査の報告書。

柏崎刈羽原発追加検査チーム:
事業者の自律的な改善が見込めるとは言えない。したがって検査を継続する

改善が必要とされた27の項目のうち、正常な監視の実現や一過性のものとしない取り組みの実践など、4つの項目で課題が残ると判断し、追加検査を継続することを決めた。

原子力規制委員会 山中伸介 委員長:
本当に、自主的に対応できている状況なのかというところは疑問の残るところ

この追加検査の継続に伴い、運転禁止命令も継続されることになった。

“原発の再稼働”目指す政府

一方で、原発の再稼働をめぐっては…

岸田首相(2022年8月)
設置許可済みの原発再稼働に向け、国が全面に立ってあらゆる対応を取ってまいります

岸田首相(2022年8月)

政府は2022年、「2023年夏以降に、柏崎刈羽原発6・7号機を含む7基の原発の再稼働を目指す」と表明。

5月16日も、電力大手7社の電気料金の値上げを了承した際に…

西村康稔 経産相:
原発の再稼働が進んでいる関西電力・九州電力は料金改定を行っておりません

西村康稔 経産相

西村大臣がこう発言し、原発再稼働の必要性を訴えていた。

原発立地自治体である柏崎市の桜井雅浩市長も追加検査の継続決定を受け、エネルギーの価格高騰に触れながら「時間がかかること、イコール安全・安心ではない。むしろ不安ですらある」とコメント。

柏崎市 桜井雅浩 市長

追加検査 終了時期は「東電次第」

しかし、追加検査は、その終了の時期を見通せないのが現状だ。

柏崎刈羽原発追加検査チーム:
東京電力の対応によるところが大きい、どのくらい時間がかるは明示できない

今後の追加検査のポイントは、「東京電力が自律的に改善する取り組みができるかどうかに尽きる」と話す山中委員長も審査終了の時期については明言できないとしている。

原子力規制委員会 山中伸介 委員長:
1カ月や2カ月で何か解決できるようなものではないかと思う。時期については答えづらいが、東電の取り組み次第かなと

原子力規制委員会は、できるだけ早い時期に東京電力の小早川社長と面会し、改善に対する決意などを確認する方針だ。

花角知事「追加検査しっかりと」

この決定について、5月17日の記者会見で受け止めを問われた花角知事は…

花角知事:
一般論として、(東京電力には)自律的な改善が見込まれる状況になってほしい

花角知事

柏崎刈羽原発の再稼働判断の材料とするため、新潟県は現在、独自の3つの検証の取りまとめを進めている。

花角知事は、県の作業の進め方に影響はないとの見解を示しながら、「今後の規制委員会の検査結果を待つ」と話した。

花角知事:
規制委員会は安全性を確認する唯一の規制機関として、追加検査をしっかりやってほしい

また、花角知事は今後必要に応じ、県の技術委員会に規制委員会の担当者を招き、検査の状況などを聞く方針を示した。