〈夏の高校野球〉新潟大会は劇的な幕切れ 東京学館新潟が逆転サヨナラで初V!先輩の思い背負った中越の夏終わる

夏の高校野球新潟大会は7月25日に決勝戦が行われ、東京学館新潟と中越が対戦した。

今大会を象徴するような1点を争う好ゲームは劇的な幕切れで東京学館新潟が初の甲子園出場を決めた。最後の最後で逆転を許した中越ナインは2021年、欠場を余儀なくされた先輩の思いを背に戦った。

初出場狙う東京学館新潟と12回目狙う中越が対戦

甲子園初出場を目指す東京学館新潟と、県内最多タイとなる12回目の甲子園出場を目指す中越の対戦となった決勝戦。

新潟県大会 決勝戦

 

試合は初回、中越が3本のヒットでチャンスをつくると、山井祐希主将のセカンドゴロの間に中越が先制点を奪う。

中越は、3回にも2アウト1・2塁のチャンスで7番・村井がレフト線への2塁打を放ち、4-0とリードを広げる。

3回表 中越・村井選手の2塁打

喜ぶ観客の中には、2021年時のキャプテン・鷲沢皇源さんの姿があった。

2021年時の中越主将・鷲沢皇源さん

2020年、夏の大会の中止が決まり、涙した当時の選手たち。その後、開かれた独自大会で優勝した。鷲沢さんの代は2021年こそと意気込み、最後の夏の大会を迎えた。

夏の大会が中止となった2020年

しかし、生徒の新型コロナウイルス感染が確認されたことで、チームは大会を出場辞退。鷲沢さんの代は戦うことなく、高校野球を引退した。

鷲沢皇源さん(2021年)

決勝の舞台で戦う後輩たちを目の前に、「一日でも長く大好きな野球をやってほしい」と鷲沢さんは懸命に声を出して応援していた。

中越高校の応援団

大会に出場できなかった鷲沢さんの代を当時1年生ながら見ていたのが現3年生だ。山井主将は試合前にも「出場辞退した先輩たちの思いも背負って頑張りたい」と強い思いを語っていた。

劇的なドラマは終盤に…

4点リードで迎えた5回。初の甲子園を目指す学館が反撃に出る。

8番・森田がピッチャー強襲のヒットで出塁すると、代打・鈴木がセンターオーバーの3塁打で1点を返す。

5回ウラ 東京学館新潟・鈴木選手の3塁打で1点差に

その後も打線がつながり、1番・佐藤、4番・遠藤のタイムリーヒットで一挙3得点。

東京学館新潟の応援団

試合はその後、両チーム1点を加え、中越の1点リードで9回を迎えた。

中越はこの回からマウンドに上がった学館の4番手・込山を攻め、1アウト満塁のチャンスをつくるが、4番・野本が三振。5番・山井がレフトフライに倒れ、追加点を奪えず。

東京学館新潟・込山投手

すると9回ウラ、流れは学館に傾く。1アウトからヒットで出塁した4番・遠藤を2塁に進めると、途中出場の近藤がセンター前ヒットを放ち、土壇場で同点に。

9回ウラ 東京学館新潟・近藤選手のセンター前ヒットで同点に

 

 

なおも続く、サヨナラのチャンス。ここで、中越はエース・野本が再びマウンドへ上がる。

中越・野本投手

中越のエースで4番、大黒柱としてチームを引っ張ってきた野本。この日投じた119球目は、森田のバットに当たり、左中間へ落ちた。

東京学館新潟・森田選手

2塁ランナーがホームへ返り、東京学館新潟が逆転サヨナラ勝ちで初の甲子園出場を決めた。

東京学館新潟 初の甲子園へ

“新時代”を作った東京学館新潟 初の甲子園へ

先輩の思いも胸に臨んだ中越ナインは、あと一歩甲子園に届かなかった。

試合後、中越の山井主将は「色んな先輩方からも応援されていたので、本当に申し訳ない」と涙ながらに語った。そして、「本当にあっという間だった。成長できたなと思う2年半だった」と、新型コロナウイルスに奔走されながらも、最後まで戦い切れた夏を振り返った。

一方で、創部40年で甲子園初出場の壁を乗り越えた東京学館新潟。「新時代」をテーマに掲げてきたチームは劇的な勝利で新たな歴史をつくった。

東京学館新潟・八幡康生 主将

東京学館新潟の八幡康生主将は「甲子園は新チーム当初からずっと目標にしていたので、それが達成できてとてもうれしい。新潟県代表として恥のないように、自分たちの持っている力をすべて出し切って甲子園でプレーしてきたい」と語り、新潟県内79校の思いを胸に初の甲子園に挑む。