

人口減少や地価下落が続く中で、新潟はどんな街を目指すべきなのか。不動産コンサルタントの牧野知弘氏に、地方都市の可能性と課題を聞いた。牧野氏は地価の下落については「県全体の平均値に意味はない」と指摘。東京対地方ではなく、地方同士の競争時代に突入した今、新潟が持つ食・景観・歴史というポテンシャルをどう磨くかが問われている。(シリーズの後編)
■31年連続の地価下落も「県全体の数字に意味はない」

新潟県内の地価は31年連続で下落し、変動率は前年比マイナス0.4%となっている。この現状について牧野氏は「日本の多くの地方にとって避けられないこと」としつつ、見方を変える必要があると話す。
「なかなか中山間部での暮らしを続けていくことが、人口の減少や高齢化によって叶わなくなっているし、行政から見ても、社会インフラをすべて今までどおりに整備していくには相当な限界が来ている。新潟市を中心に、あるいは長岡といった街の中にいかに人を集めていくかが課題。そうなると、県全体での地価の平均値はあまり意味をなさなくなる」
今後は新潟市や長岡市といった拠点都市に人を集める“集住化”が避けられないという。
重要なのは、新潟市の地価がどう推移しているかをメッシュをかけて分析すること。これは新潟に限らず、日本の地方全域に当てはまる課題だと牧野氏は強調した。
■「出ていく人を止める」より「外から刈り取る」発想へ

そして、人口流出への対策として、牧野氏は従来の考え方を変えるべきだと提言する。
「出ていく人にバリアを付けてもしょうがない。出ていった人が戻ってくる街、あるいは東京から刈り取ってくる発想に立ってほしい」
東京よりも新潟がいいと思わせるには、街としての魅力発信が欠かせない。牧野氏は自身が住む湘南エリアを例に挙げた。
「湘南に住んでいる人には地域に対する誇りがある。海というたった一つのコンテンツで全員がつながっている」
住んだことがない人でも「湘南はいいところ」と刷り込まれている。逆に「新潟から人が出てっちゃうんだよ」と言えば言うほど、新潟は人が出ていく街だと刷り込まれてしまう。
外から人が入ってくるようになれば、地元の人も「自分の住んでいる街はいい街なんだ」と感じ始める。その好循環こそが目指すべき姿だという。
■新潟駅前の再開発は「器を作って終わりにしてはいけない」

JRを中心に進む新潟駅前の再開発について、牧野氏は“一つの試金石”と位置づける。
人が集まる広場、魅力的な商業施設、オフィスを整備し、昼間の滞留人口を生み出す意義があるという。ただし「器を作って終わりではない」と強調する。
「あくまでもステージを作っただけで、ステージで踊る人、見に来る人が継続して持続していかないと単なる箱物になってしまう。どういう商業店舗を呼ぶか、どういう方々が駅前に住まいを構えるか、どういう産業を持ってくるか、考えることはたくさんある。それが本当の街づくりで、ソフトウェアも含めて作り込んでいくことがこれからの課題だと思っている」
かつての新幹線駅はすべて同じ顔だったと話す牧野氏。
「その理由は“出ていく駅”だから。これからは外部の人を迎える玄関として、降り立った瞬間に期待感を抱かせる駅であってほしい」と語った。
また、新潟駅前と古町地区の関係については「対立構造ではなく、積極的に差別化することで街全体の価値が上がる」と述べた。
古町地区には古町ならではのコンセプトがあり、そのコンセプトを磨き上げることが重要だという。
■チェーン店ではなく「新潟オリジン」を育てる

そして、街づくりで大切となるのが、“東京の真似をしない”ということ。牧野氏は新潟を訪れるたびにチェーン店には入らないと明かす。
「チェーン店は住民の方の一定の満足は取れるかもしれないが、よそ者にとっては何の魅力もない。街道沿いにチェーン店がいっぱい並んでいると、これが群馬県の道なのか、新潟県の道なのか、まったく区別がつかないラインナップになる。それだけを街が追求してしまうと、人口が減って活力がなくなっていくのを放置しているのとまったく一緒だと思う。いかに新潟産のもの、新潟をオリジンに持つものを住民の方々も含めて大事に育てていくか。そうしないと、街の魅力は出てこないと思う」
事業承継の問題も、跡継ぎがいないと嘆くだけでなく、新しい世代が参入したくなる魅力づくりが先だという。
■バーチャル古町・商店街ファンクラブ――テクノロジーで「推し」を増やす

牧野氏はデジタル技術を活用した具体策も提案した。
バーチャル上で古町を体験できる仕組みをつくり、東京や大阪の人がスマートフォン上で商店主と会話しながら買い物できるようにする。
ある地方で実際に試みた事例では、商店街のファンクラブが生まれ、リアルに訪れなくてもつながりが維持できたという。
「膨大な広告費を払わなくても、SNS上でいくらでも仕掛けができる」と牧野氏は語る。興味を持った人は自然と周囲に話し、情報は加速度的に広がっていく。
■「今だからできる」衰退が進む前に動けるか

最後に地方の未来について問われた牧野氏は、「未来を描ける都市とは、自らの地域価値を上げられる都市だ」と答えた。
住民全体が街に住む価値を感じ、外に自慢できる状態をつくることが、人口減少時代の生き残り条件だという。
「今だからできる。一定以上に衰退すると、発展の方向にベクトルを変えるのが難しくなる」
牧野氏のこの言葉は、新潟だけでなくすべての地方都市への警鐘でもある。
新潟には食、景観、歴史、そして一定の人口と経済基盤がある。これらの強みをどう磨き、どこに力を注いでいくのか。その選択が、人口減少時代の新潟の未来を大きく左右することになりそうだ。
最終更新日:Sat, 22 Aug 2026 18:00:00 +0900




