運転士不足に行政との溝…地方で“バス交通”を維持するカギは? 独自の取り組みで人材確保・増便実現する自治体も

新潟市内で路線バスを運行する「新潟交通」は、運賃値上げを国に申請しているが、その要因の一つに挙げられているのが運転士不足だ。運転士不足が深刻化する中、独自にバス交通を維持する自治体を取材した。

人件費確保へ運賃値上げを申請

新潟交通は6月8日、路線バスの運賃値上げを運輸局に申請した。申請が通れば、9月から均一区間の運賃が現行の210円から260円に「50円値上げ」となる。

バス利用者からは「通学で使うので、金銭的にはきつい」「値上がりは仕方ないが、インフラなので抑えてもらえると」との嘆きの声が…

値上げの理由について、新潟交通の古川公一代表取締役常務は「サービス水準維持には、労働力確保が目下最大の課題」と話した。

新潟交通の運転士の人数は定年による退職が続き、2023年度は4月の段階で2022年と比べ、18人少ない404人まで落ち込んだ。

「値上げにより人件費を確保し、人材の定着を図ることがバス路線維持につながる」と説明している。

運転士確保に努めるも“厳しい意見”

そこで新潟交通は7月、運転士発掘を狙い、一般の人を招いてバスの運転体験会を開催。参加者からは「女性でも運転できるなというのは、自分自身運転して思った」などの感想が聞かれた。

バスの運転体験会

このほか、従業員の大型2種免許取得費用を最大20万円補助するなど運転士確保に努めているが、7月10日に開かれた新潟市の消費生活審議会では「納得いくように説明していただきたい。本当にこの値上げ幅でないとやっていけないのか」など委員から厳しい意見が続出した。

新潟市の消費生活審議会

というのも、新潟交通は2022年度、新型ウイルス禍による利用者減少などを理由に新潟市から2億5000万円の支援を受けた一方、グループの連結決算では13億円余りの営業利益を確保。

「値上げの必要があるのか」と批判が相次いだのだ。

新潟交通の古川常務は「事業継続がそれぞれのセグメントで成り立っているということが大前提であるというふうに考えている」と話し、事業継続のためには、バス事業単体での収益確保が必要との立場を示した。

一方で、新潟市消費生活審議会の沢田克己委員長は「我々は全員、血(税金)を出している。新潟交通は自分で血を出しているか」と指摘した。

新潟市との間にも溝

こうした中、現在、新潟市と新潟交通は今後のバス運行の指針となる運行事業協定の締結に向け、模索を続けているが、新潟市の中原八一市長は「溝がなかなか埋まりにくいと推測している」と話す。

次の協定に、運行距離などの数値目標を盛り込むことが難しいとする新潟交通側と、路線の維持に向けなんらかの約束を結びたい市との間で調整は難航している。

路線バスが撤退した見附市

一方、見附市では市街地でコミュニティバスが活躍していた。

見附市のコミュニティバス

見附市では2003年に市内の路線バスが撤退し、市が2004年からコミュニティバスの運行を開始。2022年度の利用者数は新型ウイルス禍前に迫る約17万人に回復し、便数も1日69便を維持している。

“働きやすさ”で人材確保・増便実現

もちろん運転士不足は課題だったが…

見附市コミュニティバス 大﨑寿栄 運転士

見附市が広報誌を通じて運転士の募集を続けたところ、4年前に応募したのが女性運転士・大﨑寿栄さん。子育てをしながら運転士として働いている。

大﨑さんは「それぞれの家庭に合わせた時間で働ければいい。勤務時間のバランスを取って、きょうは早く帰れる」と話す。

見附市は運行会社と連携し、運転士の働き方の改善に向け、利用の少ないルートの見直しや夜10時以降の便を取りやめるなど改善を続け、人材の確保や増便を実現してきたという。

見附市都市環境部の遠藤拓央課長は「お互いが、なるべく良い関係性を保てるように、常に連絡を密に取る必要性はあると思っている」と話し、7月からは中学生以下の運賃を無償化するなど、将来に向けた利用客の確保にも取り組む考えを示した。

利用客からも「とても便利で助かっている」「コミュニティバスがないと、家からタクシーばかり使わないといけない」とその必要性や利便性に感謝する声が聞かれた。

バス交通継続のカギは、行政と運行会社の関係性にもあるようだ。

新潟市と新潟交通の溝は埋まるのか…次期運行協定の行方にも注目だ。