阪神淡路大震災を上回る“液状化”被害… 住民の要望で“説明会”実現も不安の声相次ぐ「今後どうなる…」

能登半島地震で被災した新潟市西区の住民の要望で、2月下旬、地震復旧に関する説明会が開かれた。生活再建への道筋をつけるため、住民は行政からの積極的な情報提示を求めている。

「今後は…」 住民が説明会を要望

2月26日、新潟市西区の黒埼市民会館で、住民以外には非公開で能登半島地震の支援や復旧に関する説明会が開かれた。

住民への説明会

新潟市の職員が復旧事業の現状を説明したほか、住民の質問に答えた。住民の要望によって開かれた説明会だ。

説明会の開催を働きかけた一人が、西区ときめき西4丁目の自治会長・阿部誠さんだ。

西区ときめき西4丁目 自治会長 阿部誠さん

「地域の方々から、道路もデコボコだし家も傾いているから『今後どういうふうになるのか知りたい』と。とにかく自分たちの気持ちを聞いてもらう場をつくりたかった」と開催に至った経緯を話す。

説明会には、液状化の被害が深刻な西区の善久や立仏、ときめきなどの住民が参加し、あっという間に300人の座席が埋まったという。

「それだけ関心が高かったんだと思う」と、阿部さんは言葉に力を込めた。

道路と宅地の“高低差”に不安の声

質疑応答では「新潟市による建物の被害認定調査の判定が厳しすぎる」といった意見が出たほか、“液状化で生じた道路と宅地の高低差”に関する質問が相次いだ。

道路と宅地の高低差

阿部さんが自治会長を務めるときめき西4丁目には、117世帯が暮らしている。

地震から2カ月が経ち、道路に開いた穴など危険箇所には応急処置が施されているものの、道路には至るところで隆起や沈下が起き、波打っている。

阿部さんは「皆さんが心配しているのは、公共の工事によって道路は最終的にどの高さになるの?ということ。そして、私の家はどこまで土を盛ればいいの?ということ」と代弁した。

液状化により道路と住宅に高低差が生まれたため、「行政から道路復旧の方向性が示されないと、自宅の復旧工事を始められない」と住民は不安に感じているのだ。

説明会で新潟市から説明を受けた阿部さんは、「『とりあえず現状の道路よりも、自宅の敷地を高めに設定して土を盛っておいてくれ』と。『道路ができたときのすりあわせ(段差解消)は新潟市がやるから』と言っていた」と振り返る。

この点について改めて新潟市に説明を求めたところ、「測量や工事計画の作成に時間がかかるので、それまで待てない方には、まずは現況の道路より少し高めに工事をしていただきたいということで説明させていただいた。中には、道路の場所によって何十cmも高さが違うところもあるので、そういう場合については個別に相談いただければ確認したい」という。

新潟市は、「今年6月ごろには道路復旧の高さについて、住民への提案ができる見込みだ」と加えた。

スケジュール提示も「より詳細に…」

一方、道路を含めた今後の復旧スケジュールは説明会でも示されたが、住民にとっては物足りないものであったようだ。

復旧スケジュール

阿部さんは「示されたスケジュールは大ざっぱというか…。『こんな感じでやります』というものはあるが、『細かい予定はこれから』と言われた」と話す。

説明会では、「より詳細なスケジュールを随時提供してほしい」と訴える住民もいたという。

新潟市は「決まったこと、決まらないことがある」と住民への周知のタイミングに苦慮する様子を伺わせつつも、「今後は段階、段階で皆さんに周知したいと考えている」と述べている。

復旧に向け…行政と住民で情報共有を

住民と行政が互いの意見をぶつけ合った初めての説明会。

阿部さんには「地震から2カ月後で、開催はやや遅かった」という思いがある一方、説明会には大きな意味があったと話す。

「困っている現状を誰に言えばいいの?という思いが住民にはある。それと、今回のような集まりで他の誰かが話すことによって『それ、私も感じていた』と同調する人もいる。悩んでいるのは自分だけではないというのが共有できたことはよかったと思う」

一方の新潟市も「説明会では、皆さんが今どういう段階なのか、これからどういう計画なのか…そこが知りたいんだということを肌で感じた」と説明会の意義を感じ取っていた。

「今後は自治会単位など、より小さな規模の説明会も有効だ」とする新潟市。行政と住民が情報を共有し、共に考え歩みを進めることが復旧には欠かせない。

今回の説明会が、新潟市と住民が歩幅を合わせるきっかけになることが望まれる。