原発再稼働で地元経済効果は“約4400億円” 首都圏の電力の行方は…“地元同意”が焦点に【新潟発】

再稼働による“経済効果”を県が独自調査

2023年の9月県議会で、原発の再稼働が新潟県にどのような経済的メリットをもたらすのかを問われた花角知事。

新潟県 花角英世 知事

新潟県 花角英世 知事

その際の答弁をもとに、県が野村総合研究所に調査費用1749万円をかけて依頼し、行っていた「柏崎刈羽原発の地域経済等への効果」に関する調査結果がまとまった。

調査は再稼働・稼働停止継続・7基全て廃炉を想定

調査は①柏崎刈羽原発6・7号機が再稼働した場合、②稼働停止が続いた場合、③7基全てが廃炉になった場合の3パターンが、それぞれ10年間継続したことを想定。経済・財政・雇用の3つの側面について行った。

柏崎刈羽原発

柏崎刈羽原発

調査には、産業連関表(2015年・最新)を用いたほか、東電から提供を受けた発電所の支出、従業員数といった実績値を活用した。

また、②稼働停止が続いた場合については、すでに開始されている新規制基準に対応した安全対策工事が再稼働に向けた投資であるため、その費用を除外。

③廃炉時については、国内実績が限定的であることから、海外の廃炉調査報告書を参照して推計した。

再稼働で経済効果は4396億円に

3つの側面のうち「経済」は「経済波及効果」を推計。

① 再稼働時が4396億円、②稼働停止が続いた場合が2984億円、③廃炉時が1262億円となった。

「財政」については、原発関連の税・交付金などによる収入で、①再稼働時が3216億円、②稼働停止が続いた場合が2735億円、③廃炉時が802億円。

「雇用」は県内の従業者数を示し、それぞれ年間で、①再稼働時が4680人、②稼働停止が続いた場合が2932人、③廃炉時が1986人となった。

3つの側面の全てで、①再稼働時が最も効果があると示された。

知事「調査結果は再稼働議論の材料の一つ」

この結果を受け、花角知事は「原発が止まっていることで行われない経済行為があり、結果はその差である」と述べ、「当然、稼働した方が経済効果は高いだろうとは思っていた」と結果は想定内という見解を示した。

そして、「こうした調査の結果は、再稼働議論の材料の一つになる」と話した。

一方で、報道陣から「知事も経済的には再稼動した方が良いという結論になるか」と問われると、「私がどう判断するかどうかではなく、そういった意見は出るだろう。現に地元の柏崎市・刈羽村の議会からは、そういう決議がなされている」と述べ、地元経済団体から出されていた原発の早期再稼働を求める請願を賛成多数で採択した地元自治体の例を挙げるにとどめた。

試算結果以上の経済効果生まれる可能性も

調査を主導した県産業労働部が「他の都道府県でここまでデータ取ったものはない」とする今回の調査。

柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長

柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長

再稼働に向けて検査を進めている柏崎刈羽原発の稲垣武之所長は県の調査結果について「コメントできない」としながらも、今後も「地元企業から製品や部品を調達する領域の拡大は十分あり得る」と試算結果以上の経済効果が生まれる可能性を示唆した。

再稼働の是非判断は…「これからも議論材料出てくる」

しかし、再稼働議論で最も重要なのは「安全」だ。県内の各自治体からも原子力災害時の避難計画の実効性を問う声が相次いでいる。

花角知事は能登半島地震を受け、課題となった屋内退避について原子力規制委員会が検討を始めたことや、県の技術委員会が議論を続けていることを挙げ、「これからも再稼働議論の材料は出てくる」と強調。

再稼働の是非を判断するには、材料と時間がさらに必要であることを示唆した。