在宅療養の患者「電気は生命線」
ALS患者 北條正伯さん:
まさに、電気は私たちの“生命線”。
ヘルパーを通してこう話すのは、新潟市西蒲区に住む北條正伯さん(62)。
北條さんは10年前に国が指定する難病ALS・筋萎縮性側索硬化症と診断され、全身の筋肉をうまく動かすことができない。
人口呼吸器やたんの吸引器など、在宅療養に必要不可欠な医療機器は全て電気で動いている。
ALS患者 北條正伯さん:
電気料金の高騰は、私たち難病患者や医療的ケア児にとって、非常に深刻な問題
燃料費の高騰などを背景に、これまでも値上げが続いてきた電気料金。
妻と母親と3人で暮らす北條さんの家庭では、2023年1月の電気料金が2022年に比べて、2万円以上高い約5万4000円に。ガス料金も合わせると、10万円以上の出費となった。
北條さんの妻・和子さん:
1月は涙が出そうだった。このほかにもまだ、灯油のストーブとかも使っているので…
節電も…さらなる値上げに「涙が出る」
在宅療養のため、北條さんの部屋では一日中、温度調整が欠かせない。そこで2月以降は、暖房をエアコンと加湿器の併用からガスストーブ1台に。
医療機器以外の部分で電気を節約したほか、政府による負担軽減策で2022年と同じくらいの料金に落ち着いた。
北條さんの妻・和子さん:
タオルを温める機器も、いつもは24時間つけていたが、タイマー式にして細かく切ったり、つけたりしている。ヘルパーさんたちにも「廊下の電気を消してください」とか、節約に協力してもらっている
こうした苦労を重ねる中でのさらなる電気料金の値上げ。妻の和子さんは不安を募らせている。
北條さんの妻・和子さん:
夏はストーブに換えられないので、ほぼエアコンで24時間…。料金がどのくらいになるか、ちょっと怖い。涙が出る。でも、命が一番大事なので頑張る
切実な思い…「行政には支援を」
元新潟市職員の北條さんは、病気のため2015年に退職した。
現在、収入源は和子さんのパート収入のみで、そこに障害年金などを合わせて生活をやりくりしている。
電気とガスだけで10万円以上がかかった1月ごろには、光熱費に対して国と市から合わせて6万5000円の臨時給付金もあったが…
北條さんの妻・和子さん:
1カ月分で消えた。すごくびっくりした。色んな設備が必要で「そういう電気代に対する補助は国からありますか」と行政に訪ねたが、「ありません」という回答だった
北條さんによると、値上げされた場合の電気料金は、人工呼吸器だけでも単純計算で年間約6万円に上るという。
日本ALS協会新潟県支部の支部長も務める北條さん。
県内のALS患者は188人にのぼるとして、高騰する電気料金に対し、「行政には支援をしてほしい」と訴える。
ALS患者 北條正伯さん:
難病でも諦めずに、前向きに生きる基盤・土台となる安定した療養体制が必要不可欠。人工呼吸器をつけて、自宅で療養している最重度の障害者や医療的ケア児が数多くいることを知ってほしい