

不登校の生徒に寄り添った学びを提供する文科省指定の『学びの多様化学校』新潟県内で2026年初めて開校し、10月で半年が経った。子どもたちにどのような変化が生まれているのか。現場の声を取材した。
■増加する不登校…“多様化学校”設置で学びの機会確保へ

校舎の中にはハンモックやボードゲーム。教室には畳が敷かれ、クッションが置かれていた。

ここは新潟県小千谷市で26年4月に開校した学びの多様化学校『木かげ』だ。
在籍する生徒に話を聞くと、「精神的にもつらくなって学校に行けなくなった」「前の学校で自分と合わない友達がいて、だったらここで楽しくやり直そうと」と、この学校に入った理由について説明してくれた。

『学びの多様化学校』は学校に行けなくなった子どもたちの学びの機会を確保するために設置された新たな形の学校なのだ。
小千谷市の松井周之輔教育長は「子どもの数は減っているが、不登校の数は増え続けているので、多様化学校が大事。これは小千谷市に取り入れたいと思った」と話す。
全国の小・中学校の不登校の児童と生徒の数は2024年度、35万3970人と12年連続で増加。新潟県内では5829人と、9年連続で過去最多を更新している。
こうした状況を受け、文部科学省が全国で設置を進めているのが学びの多様化学校だ。
現在は公立・私立合わせて34都道府県に84校ある。26年4月には県内で初めて小千谷市と上越市に設置された。
■多様化学校編入で再び登校できるように「学校行けず不安だった…」

長岡市から小千谷市の『木かげ』に通う中学2年生の『とあ』さん。
「みんなが不登校だったら自分が浮くこともないのかなと思ったので入学した」
クラスの雰囲気に馴染めなかったことが理由で、中学に入学して2カ月で不登校になったと明かした。
「もやもやするし、このまま学校に行けないと自分だけが置いていかれる、勉強についていけなくなるとか色々不安で…」
そこで、この春、勇気を出して編入。自由な校風が肌に合い、再び登校できるようになった。
■「生徒自身が決めた目標実現へ」学習指導要領に縛られない教育

「一番違うのは校則が緩いところ。だけど、一番好きなのは先生の態度と、無理に授業を受けなくても自分のペースで進められるところ」と話すとあさん。

学びの多様化学校は学習指導要領に縛られない。
木かげでは年間の授業時間数を通常の1015時間から910時間に短縮し、授業は1コマ45分。副教科などの時間を減らし、課外学習などに充てている。
原則、宿題や定期テスト、通知表の受け渡しはない。
学びの多様化学校木かげの尾原祥弘先生は「生徒が自分で決めた目標がなるべく実現するように意識しているので、教師側からみて『こうした方がいいのでは』と思うことはあるが、まずは子どもたちがどう頑張りたいのか聞き、決めたことを見守って支える」と話す。
■多様化学校が果たす重要な役割「グループ活動の経験」

不登校問題に詳しい新潟大学教育学部の田中恒彦教授。

社会に出た際に通常の学校を経験した人と比較される可能性があると指摘するが、それ以上に、学びの多様化学校でしか得られない体験をすることが重要だと話す。
「人間関係の調整スキルを学ぶ、大人に適切に頼る経験、グループの中で活動する経験を不登校だとまったくできない。それを補える意味でも大きい存在」
また、田中教授はフリースクールとの大きな違いは費用負担にあると指摘する。
「公立の学びの多様化学校は基本的に義務教育と同じで費用負担も少ない。経済的背景を考えずに子どもたちが通えるメリットはとても大きい」
■生徒たちに変化「毎日楽しい」

現在、中学1年生から3年生17人が通う『木かげ』。
通い始めて半年が経ち、ある生徒は「よく笑うようになったし、親からも笑顔が増えたと言われるようになった」と、自分自身に変化を感じていた。

とあさんも「一番変わったと思うのは精神面と、学校が楽しいと思えるようになった。毎日楽しいから(入学して)よかったなと思う」と笑顔を見せた。
とあさんは高校・大学進学を目指して少しずつ勉強にも取り組み、再び夢と向き合えるようになったという。
「将来の夢はスポーツ関連の仕事に就くことで、話せなくなるのをなくしたいと思って過ごしているので、(この学校で)変わりたい」
新たな形の教育が悩みを抱える子どもたちに光を照らしている。
最終更新日:Sat, 24 Oct 2026 19:00:00 +0900



