「お金のことは、よく分からないまま避けてきた」。
多くの若手社会人が抱える、そんな漠然とした不安。アルビレックス新潟レディースで活躍する滝川結女選手と、NSTの高濱優生乃アナウンサーも例外ではない。「あればあるだけお金を使ってしまう」「投資やNISAって聞くけど、何から始めたらいいの?」「保険って、そもそも何?」そんな率直な疑問に答えるのは、新潟医療福祉大学の栗井英大准教授。お金のプロフェッショナルと共に、「貯める」「増やす」「備える」、そして「賢く使う」ための基本を学ぶ。
「あればあるだけ使っちゃう…」まずはお金が自動的に貯まる仕組みづくりから
高濱: 今回のテーマは「資産形成」です。お金を貯める、増やすということが大事になってきますが、滝川さんはどうやってお金を貯めていますか?
滝川: それが、私も聞きたいくらいで…。毎月、余ったお金を貯めている、というぐらいです。これだけ貯めよう、と決めているわけではなくて、「あ、今月はこれだけ貯まっていたんだ」と後から気づくイメージですね。
高濱: 私も全く同じです。計画的ではなく、余った分を貯金するというやり方です。
栗井: なるほど。お金を貯める上でまず大事なのは、その考え方を変えることです。余ったお金を貯蓄するのではなく、まず先に貯金する分のお金を差し引いてしまう。「先取り貯金」ですね。
栗井: 無理のない範囲で、お給料から天引きされる仕組みを作ってしまう。あるいは給料日に合わせて、決まった額を別の口座に自動で引き落とすように設定する。そうすると、残ったお金の範囲で生活することになり、貯金用の口座には自動的にお金が貯まっていく仕組みができます。
滝川: 天引きって、どうやったら設定できますか?
栗井: 会社の経理などに相談して手続きをする方法もありますし、ご自身が給与振込で使っている銀行の窓口で相談すれば、すぐに手続きできますよ。
高濱: 私は口座を1つしか持っていなくて、入ってくるお金もカードの引き落としも全部そこなので、お金の流れがごちゃごちゃなんです。
栗井: 分かりやすいのですが、貯めることを考えると口座は分けた方がいいですね。貯める用の口座は「手を出さない、使わない」と決めておくと、どんどん貯まっていきますよ。
高濱: なるほど…。そもそも、普通預金と定期預金の違いもよく分かっていませんでした。
栗井: 普通預金はいつでも自由に入出金できる口座です。一方、定期預金は「1年間預けます」というように、一定期間引き出さないことを約束する預金です。その制約がある分、普通預金よりも少しだけ利息が高いという特徴があります。
栗井: 毎月決まった額を定期預金に積み立てていく「積立定期預金」という仕組みもあります。これも銀行で手続きができますので、まずは相談に行ってみるのが第一歩ですね。
滝川: ずっとやりたかったです!どうすればいいか分からなくて。銀行に行って言えばできるなら、1歩が踏み出せそうです。
現金だけだと価値が下がる?インフレ時代に考えるべき「お金を増やす」
栗井: 資産形成を考える上では、お金を3つに分けて管理することが大切です。1つ目は日々の生活で「使うお金」。2つ目は先ほどお話しした、将来のために「貯めるお金」。そして3つ目が、老後資金や万が一の事態のために「増やす・備えるお金」です。
高濱: 「増やす」となると、また別の知識が必要になってきますね。
栗井: そうですね。ここで考えなければいけないのが「インフレ」です。インフレとは、世の中のモノやサービスの値段が継続的に上がっていくことです。
栗井: インフレが進むと、同じ金額で買えるモノが少なくなります。つまり、預貯金や現金の価値が実質的に下がってしまうということです。
栗井: 例えば、今100万円で買える車があるとします。物価が年3%上がると、1年後、その車は103万円になります。でも、手元の現金は100万円のまま。これではもう車は買えませんよね。
滝川: なるほど…。
栗井: これからの時代、物価は上がり続けていく可能性が高いです。だからこそ、ただ貯金するだけでなく、インフレに負けないように資産を「増やす」、つまり「投資」という考え方が重要になってくるのです。
投資は怖い?ギャンブルとの違いと「NISA」の基礎知識
滝川: 正直、投資ってよく分かっていないし、怖いイメージがあって手を出せていません。メリットもデメリットも分からなくて…。
栗井: 投資はギャンブルとは違います。ギャンブルは当たるか分からないものにお金を使い、お金が減っていく可能性が高い仕組みです。一方、投資は、企業の成長などを見込んでお金を出し、将来そのお金が増えて返ってくることを目指すものです。
栗井: もちろん、投資には「リスク」が伴います。しかし、投資におけるリスクとは「危険」という意味ではなく、「リターン(収益)の振れ幅」のことです。リスクが大きい商品は、大きく増える可能性もあれば、大きく減る可能性もある。リスクが小さい商品は、その逆です。
滝川: チームメイトから「NISA(ニーサ)を始めた方がいいよ」とよく言われるのですが、NISAって何ですか?
栗井: NISAは投資をするための一つの制度です。通常、投資で利益が出ると約20%の税金がかかるのですが、NISA口座を通じて投資をすると、その利益が非課税になります。その分、手元に残るお金が増えるので、投資家にとって非常に有利な制度と言えます。
高濱: NISAはどうやったら始められますか?
栗井: ネット証券などで口座を開設すれば、スマホで5分から10分程度で手続きできますよ。ただ、どんな商品に投資するかは、ご自身でしっかり情報を得て、どれくらいのリスクとリターンがあるのかを理解した上で選ぶことが大切です。
そもそも保険って何のため?自分に必要な保障を見極める
高濱: 先ほどお話にあった「備えるお金」についてですが、これは保険ということでしょうか。
栗井: はい。保険は、万が一の事故や病気など、予測できない大きな支出に備えるためのものです。少しずつお金を増やしていく貯蓄や投資とは目的が異なります。
滝川: 保険というと、種類がたくさんあって何がいいのか分からなくて…。そもそも何のために必要なのかも、いまいち…。
栗井: まず知っておいてほしいのは、日本には手厚い「社会保険」制度があるということです。例えば、病院での医療費の自己負担は原則3割ですし、もし大きな手術などで医療費が高額になっても、「高額療養費制度」によって1ヶ月の支払い上限額が定められています。
栗井: その上で、民間の保険に加入するかどうかは、個人の考え方やライフステージによります。例えば「生命保険」は、自分が亡くなった時に遺された家族にお金が支払われるもの。扶養する家族がいるかどうかで必要性が大きく変わります。
栗井: 「医療保険」は、病気やケガで入院・手術した時に給付金が受け取れるものです。社会保険でカバーしきれない部分、例えば保険適用外の先進医療を受けたい場合などに備えることができます。
栗井: 大切なのは、自分にどんな保障が必要かを考え、それに合わせて保険を選ぶことです。保険会社の言う通りに加入するのではなく、自分で知識を身につけて判断することが、無駄な保険料を払わないためにも重要です。
「リボ払いで大失敗…」ローン・クレジットとの賢い付き合い方
高濱: 最後のテーマは、ローンとクレジットです。私はクレジットカードの支払いで大失敗した経験があるんです…。
高濱: 卒業旅行で海外に行った時、上限額を一時的に60万円に増額したつもりが、実は「分割・リボ払い」の枠を含めた金額で、通常の一括払いの枠は30万円だったことに気づかず、旅行3日目でカードが使えなくなってしまって。
高濱: 慌てて現地のATMで現金を引き出す「キャッシング」を利用し、帰国後にその返済を「リボ払い」にしたのですが…。月々5,000円の支払いで済むからと安易に考えていたら、なかなか返済が終わらず、結局2年ぐらい払い続けることになりました。
栗井: リボ払いは、毎月の支払額が一定になる便利な面もありますが、手数料(利息)が非常に高い点に注意が必要です。ここでクイズです。年利18%のリボ払いで30万円の買い物をし、毎月5,000円ずつ返済すると、完済までに何年かかり、総額はいくらになると思いますか?
滝川: うーん…9年で48万円くらいでしょうか?
栗井: 正解は、なんと完済まで約13年、返済総額は約77万円です。
滝川・高濱: ええーっ!
栗井: 借りた額の2.5倍以上を支払うことになります。毎月の返済額のうち、多くが利息の支払いに充てられ、元金がなかなか減らないのがリボ払いの特徴です。できるだけ利用は避けた方が賢明です。
高濱: では、滝川さんが利用されたという自動車ローンのような「ローン」は、どう考えればいいのでしょうか。
栗井: ローンも後から分割で支払う点は同じですが、住宅ローンや自動車ローンのように使い道が決まっているものは、クレジットカードのキャッシングなどに比べて金利が低く設定されています。何千万円もする家を買うために、現金が貯まるのを待っていたら何十年もかかってしまいます。ローンを組むことで、必要なタイミングで大きな買い物をし、人生を豊かにするというメリットがあるのです。
栗井: クレジットカードもローンも非常に便利なものですが、その仕組みと返済計画をしっかり理解した上で、賢く付き合っていくことが大切です。
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高濱: 今回はお金についてたくさん学びましたが、滝川さん、いかがでしたか?
滝川: 今までお金のことは避けてきた部分だったのですが、先生が詳しく説明してくださったので、すごく理解できました。自分の将来のために、今何をすべきか、改めて考えようと思いました。
栗井: お金の知識を身につけることは、経済的な自立や将来への備えにつながり、お金に関するトラブルを回避することにもなります。ぜひこれからも、お金の勉強を続けてみてください。










