

華やかな舞や芝居で観客を魅了する大衆演劇。この春、その世界で花形へ昇進したのが、新潟県三条市出身の24歳の若者だ。努力を重ねてきた若手役者の節目の日を取材した。
■高校卒業後“大衆演劇”の世界へ!

華やかな舞と芝居で観客を魅了する大衆演劇。
新潟市中央区の古町演芸場で公演をしているのが、関東を拠点に全国を巡る人気劇団・三國座一見劇団だ。

この中の若手役者が6月、花形へ昇進した。
三条市出身の紅由高さん24歳。紅さんが大衆演劇と出会ったのは高校3年生の時だったという。

「母親と初めて見に来て、最初に見たのが一見劇団さんで、こんな世界があるのかと思った」
役者一家ではなく、大衆演劇とは縁のない環境で育った紅さん。それでも舞台に魅了され、高校を卒業後、この世界に飛び込んだ。
紅さんは「全く知らない世界に飛び込んで、もう本当に毎日わからないことだらけだった」と振り返る。

総座長・一見好太郎さんと2人の座長のもとで経験を積んできた紅さん。
劇団員と寝食をともにして1カ月~2カ月ごとに場所を移しながら全国を巡業している。
芝居が終わると、次は舞踊。限られた時間の中で、次々と準備を進める。
■入団から6年…昇進のウラに地道な努力「芸は見て盗むしかない」

劇団入りから6年。華やかな舞台の裏で続けてきたのが、地道な努力だ。
「僕は人より覚えるのが苦手なので、人の2倍~3倍やるしかない」

女形の所作や踊りも先輩たちの背中を見ながら学んできた。
「見て盗むということしかないと思う。舞台の袖で見たりして、芸を盗むというほかないかなと思う」
その姿を周囲も見ていた。
総座長は「素人から入って、ここまでよく育ってくれた。彼の努力があってこそ」と話す。
積み重ねてきた努力が花形昇進へとつながった。
■「途中でくじける子も…よくやっている」

全国には約80の劇団と80の劇場がある大衆演劇。
その魅力のひとつが、役者と観客の距離の近さだ。舞台から客席へ降りて踊ることも珍しくない。

一方で新型コロナウイルスが猛威を振るった時期には劇場の休館や観客の減少も経験。ここ古町演芸場も一時休館した。
座長は「新型コロナで劇団を辞めたところもあった」と明かす。
さらに、役者の多くは代々続く劇団の家に生まれた人たち。外部から飛び込む若者は決して多くない。
「途中でくじける子もいる。6年よくやっていると思う」と座長は話す。
■昇進祝う特別公演開幕!

6月に行われた紅由高さんの昇進を祝う特別公演。
他の劇団の役者もこの日のために全国から駆け付け、朝から入念に練習を重ねていた。

そして、会場の外には花形昇進を祝う花が飾られていた。
この花形昇進公演に特別な袴を着て臨む紅さん。それはこの日のために劇団の座長が仕立ててくれた袴だった。

そしていよいよ、花形昇進公演の幕が上がった。この日の芝居の主役は、もちろん紅さん。
演目は『伊達の新造』という人情芝居。
頼りない田舎者が、ある騒動をきっかけに男を上げて大立ち回りを演じるという笑いと涙が詰まった作品だ。

そして舞踊では、華やかな舞で観客を魅了した。
公演後も続くファンとの交流。

紅さんは「みんなの温かみに感動した一日だった。今からがスタート。自分の色を出して、人に流されずに、芯の通った花形になりたい」と意気込んだ。
高校生の時に出会った大衆演劇。その舞台に魅せられて6年。努力を積み重ねてきた若者が新たな一歩を踏み出した。
最終更新日:Sun, 05 Jul 2026 19:00:00 +0900



